靴と足の話

足の構造と機能1


a.足の構造


 人類は地球上で唯一『直立二足歩行』を常とする哺乳類です。 トレーニング次第ではかなり長い時間片足で立つことも可能です。

 人が安定して立ち続けるためには、三脚のように『3点以上の支持』が必要です。それではなぜ人は『2本足』で立ち続けることが出来るのでしょうか?

 それには理由かあります。



 実際、人は2本の脚(2点)で地面に接しているわけではなく、脚の先にあり地面に接している『足』の裏の3点、計6点を支点として立っているのです。

 人の『直立二足歩行』を理解するためには、『足の構造と機能』を知らなければなりません。

 足の各部がどのように構成され、どんな働きをするのか、足の裏の支点はどこにあり、どの位置に重心を構成するのか、そして、どのように重心を制御しているのかを知ることは、良い靴を選ぶための基礎知識として必要不可欠です。 

 まずは骨格から見てゆきましょう。

 下の2枚の写真は人の足の骨格標本です。上が上方から、下が足の裏の側から見たものです。人体は標準体で208個の骨で骨格を形成しています。その内、足の骨は脚部を除き片足で26個(種子骨は含まず)、両足52個で構成されていて、からだ全体の骨の4分の1をも占めています。



  足趾骨グループ(14個) 1〜5.末節骨 6〜9.中節骨 10〜14.基節骨
  中足骨グループ(7個) 15〜19.中足骨 27,28.種子骨  
  足根骨グループ(7個) 20〜22.楔状骨 23.立方骨、24.舟状骨 25.距骨、26.踵骨



 足部の骨は靭帯により結合され骨格を形成しています。

 足には脚とを結ぶ5つを含めて、大小合わせて20あまりの靭帯があります。あるものは骨格の基本的な形を弾力的に保持し、またあるものは骨間に出来た関節に自由な動きを与え、あるいは複数の骨で構成される足弓(アーチ)を支え、補強しています。

 筋肉は、神経からの伝達物質の働きで筋繊維を収縮、弛緩させ、その長さを変えることが可能です。二つ以上の骨にまたがって骨に付着した筋肉は、収縮時に起こる引く力を使って関節に動きを与えます。一部の筋肉はその先端部に腱をもち、滑車のような役割の筋支体や腱鞘を経由して曲線的に遠方の関節に動きを与えます。

 これらの組織を維持するため血管網やリンパ線網が網の目のように足全体に網羅されています。同様、足部の知覚器官や筋肉の動きをつかさどる神経網が足部全体に網羅されています。

 これらの内部組織を守るため皮膚組織が足部全体を包み、基底部(足の裏)では真皮(皮膚の最深層)と内部組織の間には厚い脂肪層が形成され衝撃をやわらげるようはたらきます。立つことによる刺激で基底部の皮膚は角質化して厚みを増し真皮より深い組織をまもります。また、基底部の表皮には指紋が形成されていて接地面との滑りを抑え『直立』及び『歩行』の安定に貢献しています。


b.足の機能/立つ


 足には骨格が作る4つのばね(足弓)があります。このバネが着地時の衝撃吸収や足底部のなめらかな重心の移動や安定に貢献しています。

 下の図は内足斜め下側から見た骨格模型です。ABが内足縦アーチ(土踏まず)、ACが外足縦アーチ、FGが足根部横アーチ、BCが前足部横アーチです。



次の3枚の写真で筋肉の動きや加重変化が足の形を如何に変化させるかを御覧ください。


写真1は、上方から見た体重の掛かっていない状態の足です。
足のアーチがたわんだ状態で足趾の広がっていないため、写真2,3に比べて細く見えます。


写真2は、1の状態から意識的に足趾を開いた状態です。
足趾部は横に大きく広がりましたが、中足部から後ろの幅は広がっていません。


写真3は、右足に全体重をかけて立っている状態です。
極限まで体重の掛かった足は大きく横に広がり指の付け根の部分の横幅は写真2よりも広くなっているのが御覧いただけるでしょう。これは、後述する足部の4箇所のバネが体重によりたわみを減少させ、横方向に広がるためです。


 中足骨々頭(凸面)と足趾基節骨々底(凹面)が造る関節を中足趾節関節(Ball joint)と言います。関節面が球面のため大変自由度の高い関節で、複雑に配置された筋肉群により足趾を上下左右斜め方向に動かすことを可能にします。

 第一足趾と第5足趾は構造上中3本の足趾に比べ側面への自由度が大きくなっています。そのため第一足趾と中足骨の造る関節は『母趾球』、第5足趾側を『小趾球』と区別して呼びます。


内足側から見た中足趾節関節(母趾球)

内足側から見た中足趾節関節(母趾球)


これら関節を動かす力は足部の筋肉により生まれます。


左の図は足底部側から見た右足の骨格図です。

骨格に寄り添うように付いているのは内足側(親指側)が母趾外転筋、外足側(小指側)が小趾外転筋です。
両外転筋は一辺が踵骨に付着して、もう一辺が前方の母趾及び小趾の基底骨外側部に付着しています。

腕立て伏せで指を開いて手を着くのと同様、正常な状態の足はこの2つの外転筋を収縮させ足趾を横に大きく開くことができます。 

足の裏には加重を感じる感覚受容器があります。
下の図のように体重が足部に架かり前足部の横アーチを押し下げると、中足骨頭が小趾側から順次接地して足裏の感覚受容器が加重を感じ始めます。

その刺激で2つの外転筋は徐々に収縮をはじめます。全ての中足骨頭が着地する頃には、外転筋の収縮により両足趾は外側に大きく広がります。


赤丸が中足骨頭です。


左の図は、前足部の横アーチを表したもので上が空中にある状態を、したが着地した状態を示しています。
左の小さな三角形から、小指、薬指、中指、人差し指、そして大きな四角形が親指の各骨頭を表しています。


 人の足指(足趾)は横への動きのほか、下の図のように上下にも動くことが出来ます。足趾の上下への動きは『直立時』の基底部での重心の調整を可能にします。また、動歩行(人の歩行形態)時の基底面の滑らかな重心移動に重要な働きをします。
 加えて、鍛えられた足では、この指の動きは衝撃を吸収するバネの役目も果たします。



足の裏には足の骨格の基本部分がつくる三角形ABCがあり、この三角形の作る重心G2で立つことが可能です。
しかし、この三角形では支点となる3つのポイントには大きく可動する部分がなく、バランスの崩れを調整する機能がないため、上体の重心変化による体全体の重心の移動を制御できません。

実際には、足裏への加重を刺激として収縮した両外転筋が各足趾骨を足首を中心に扇状に広げ、全ての中足骨から末節骨までの並びを直線状に整えます。  その結果、着地時の足は親指の指紋のセンターと小指の指紋のセンターと踵骨の下端を支点として大きな三角形ADEを形成します。

この三角形には可動する5本の足趾があるので重心の制御が可能となります。


正常な人の足裏は直立時に踵よりも足趾側により多くの加重が架かる構造になっています。


先ほど腕立て伏せの手の動きの話しをいたしましたが、足も同様、正常な状態では足趾は踵よりも多くの加重を負担します。

足指の腹(指紋のある側)には加重を敏感に感知できる感覚受容器といわれる組織が発達しています。

正常な人の重心は足底部の三角形ADEの重心よりやや前方にあり、常に爪先方向へ移動しようとしています。この加重変化を各指の感覚受容器が感知して、G1方向に適宜押し返すことでバランスを維持します。


人は硬い平坦な石畳の上よりも弾力性のある柔らかな土の上でより安定して立つことが出来ます。


人の骨格はアフリカ大陸で猿から進化した草原の環境に依存しています。現在でも骨格に当時との大きな変化はありません。草原の地盤は弾力性のある軟らかな土でした。動物がその上に乗れば足型が残るほどの固さで沈み込みます。その柔らかな土壌で直立して安定を保とうとすると、バランスの調整のためより多く加重のかかる前足部は踵部や中足部よりも多く土中に埋没します。したがって足の裏には左の図のような踵から爪先までの緩やかな下りの曲線が生まれます。人体の骨格はこの緩やかな角度の接地面の上にバランスするように進化してきました。



注 赤いラインが地面を表しています。


 したがって足の裏にこの曲線を保持することが正しい姿勢を維持するのに大変重要なのです。このことはそのまま履きやすい靴を選ぶときの重要なポイントになります。




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