靴と足の話

足の構造と機能2


c.足の機能/歩く


 滑らかな歩行には体全体の動きをひつようとしますが、ここでは歩行の為の足の機能のみについて述べることに留めます。

 人が歩くということは、人体の重心を前方に移動させてゆくことに他なりません。

 人の歩行には、重心の移動法の違いから、『静歩行』と『動歩行』との2種類があります。『静歩行』では歩行時の重心移動を両足が着地している間に行うのに対し、『動歩行』では前方に出した片足が着地する前に、着地点方向への重心移動を開始することにあります。


右の図は動歩行時と静歩行時の重心位置の違いを表しています。

動歩行では重心は常に前方に移動してゆきます。
そのため必ずしも足の裏重心があるわけではありません。
2つの足が交互に前方に移動する時、後方の足から前方の足にキャッチボールのように重心を渡してゆきます。


 動歩行は非常に効率の良い歩き方で、比較的平坦な路面を移動するときに有効な歩き方といえます。動歩行を高速にしてゆくと走る動作となります。


 静歩行では後方に残した足に重心を預けたままもう片方の足を前方に出します。
 そして、前方に出した足が接地しで重心を十分に支える体制が出来たとき、上体を前に出して体重を移動します。

 静歩行は非常に安定した歩き方で滑り易い路面や極端な悪路で有効な歩き方ですが、重心の移動が一定ではなく、歩行速度も遅くなります。


 人は通常『動歩行』で移動します。

 『動歩行』を円滑に行うためには脚や足に複雑な動きが要求されます。


脚と足とを結ぶ足関節は上下に大きく動き踵から爪先への円滑な重心の移動を可能にしています。
右の図は『着地直前』と『蹴り出し』時の下脚と足の動きを抽象化したものです。
歩行のため脚を前方に出すと脚の前方に分布する伸筋群が収縮して足の甲を上方に引き上げます。
蹴り上げ時には脚の後方にある屈筋群が収縮して足の裏を後方に大きく反らせます。


左の図は左から空中、着地開始、着地完了時の右足の足底の傾きを爪先側より見た略式図です。

空中にある足は足底をやや内側に傾けた状態で足関節に付いています。
そのため踵の外側から最初に着地することになります。
足関節が足の内側に付いているため足の裏は外足側から内足側へ着地面を広げてゆきます。


下の写真は歩行時に於ける足の裏の体重負荷経路を表したものです。


歩く時、足の裏での重心は踵の後ろ外側からに始まり、外足側を前方に移動して小指付け根の関節までゆきます。
そこで内足側に方向を変え中足趾関節の列に沿って親指付け根の関節まで移動します。
そして、もう一度前方に方向を変え、親指の先で終わります。

重心の移動経路が大きくクランク上に方向を変えるのは、最初に接地する踵外側部が足関節より外足側にあるため、外傾した足底面を平行にしようとする力が働くことと、足底面の外傾により他の指に先駆け小指と薬指が着地して、足指の腹にある感覚受容器が加重変化をいち早く察知し、外足側に逃げようとする重心を内足側に押し戻すことによります。


左の図は歩行中の両足の重心移動を表しています。

赤の線は人の身体を左右の半身に分ける正中線を、青線は足の裏でのじゅうしんの移動を、空色の線は重心が足を離れ次の足に移るまでの空白域を表しています。

歩行中の足は、足底面の角度を自在に変えて重心を滑らかに前方に移動させ、もう片方の足に重心を送り出すことを最大の役目としています。
特に、内足側(小趾球から母趾球)への重心の移動は正中線をはさんだもう一つの足への重心の送り出しに不可欠な動きとなります。
足首から足にかけてうちわを扇ぐような動きをすることから『煽り足歩行』といわれています。

前足部に重心が移動して足趾部に体重がかかると、5本の指はおのおの加重変化を感知し斜め前方にあるつぎの足の方向に正確に蹴り出すよう押す力を調整します。


 足指は、足に加重を架け立ち上がろうとした瞬間から、静止時の重心の安定や歩行時の滑らかな重心移動に重要な働きをしています。
 特に親指(母趾)と小趾(小指)は踵と共に造る足を支える3角形の二つの頂点に位置し、重心の制御に大きく寄与しています。

 小指の働きの大切さは日常はあまり意識されませんが、家の中で何かに小指をぶつけた時などに歩行が非常に困難になることで、その重要さを理解出来るでしょう。




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