外反母趾は、靴による足への圧迫によりおこります。
健康な足趾(そくし)は地面を蹴りだす時、外側に開こうとします。 しかし、小さな靴に足趾をいっぱいに入れて履き続けると、指は強い圧迫を受けて変形をはじめます。 そして、長い歳月をかけて親指が小指側に曲がり、中足趾節関節(ボールジョイント)が『く』の字に変形して指が開かない状態になります。 |
左の図を御覧ください。
A(踵)、B(親指の腹)、C(小指の腹)の作る三角形を表しています。健康な足はこの三点で重心を支えています。 外反母趾の足は足趾の変形で十分に体重を支える力がないため、B(親指の腹)の代わりにD(母趾球)C(小指の腹)の代わりにE(小趾球)と踵の造る三点で体重を支えざるを得なくなります。 外反母趾の△ADEが造る重心G2は健康な足の△ABCの造る重心G1に比べ後方に位置します。 両重心位置の差は成人男性の標準的な足の大きさで距離にして4〜5cmほどのわずかなものですが、ひとの体の姿勢や運動機能には大きな影響がでます。 |
前章(足の構造と機能)
で述べたように重心が踵側にわずかにずれるだけで、人は背中を伸ばした正しい姿勢では安定して立てなくなります。
右の図は足裏の重心が正常な位置(G1)に在るときの人の姿勢です。 この位置ではからだ全体の重心は前方に移動しようとします。人は足趾で足裏の重心位置を調節すると共に、胸を張り頭部を後方に移動してからだ全体の重心の安定を保ちます。 左の図のように重心の後方への移動(G2)は、からだ全体の重心を後方に引き寄せます。 踵にはバランスの調整機能がありませんので、背中を丸め頭を前方に移動させることでからだ全体の重心を調整しなければ安定して立てなくなります。 これが俗に言う『猫背』の姿勢です。 |
この写真では第2趾から小趾に掛けて関節が『くの字』に 変形、固定化して『槌状趾』の状態になっています。 |
主に人指し指、中指、薬指の3つの指におこる足の傷害で、まれに親指や小指にもおこることがあります。
足の外反と伴に起こる足趾の変形です。各指を構成する3本の骨(つま先側から末節骨、中節骨、基節骨)の間の関節が、かぎ型に折れ曲がりその形のまま固まって伸展できなくなった状態で、金槌(かなずち)に似た形状に変形することからこうよばれます。 |
この写真では小趾が上方に変形し 『浮き指』の状態になっています。 |
浮き指も靴による足への圧迫によりおこります。
小さな靴やつま先に十分な横幅の無い靴を履くと、前足部に体重をかけたとき足趾が十分に開く空間を確保することはできません。 そのため一部の指が宙に浮いたままの状態になり、固定化してしまうことがあります。 私は長年、この状態を『不接地趾』と呼んでいました。しかし、最近読んだ新聞記事で整形外科医が『浮き指』と書いていましたので、現在はこちらの名称を使っています。 |
パンプス、ローファーなどを常用すると発生しやすくなります。
細いつま先に押し込まれた足指は、歩行中に靴によって圧迫され、隣り合った指同士や靴の内壁との間で摩擦しあうことになります。これが胼胝や鶏眼の大きな原因になります。 また、ハイヒールは中足趾節関節や足趾部に荷重が集中するため胼胝や鶏眼が非常に発生しやすい靴といえます。 |
通気に配慮した設計の靴は、歩く時、靴が曲がるたびに湿って高温になったつま先の空気(赤の矢印)を、履き口へと圧送して排気し、元に戻るときに乾いた低温の空気(青の矢印)を外部から補充して、つねに靴の中の湿度と温度を一定の範囲に保つようにできています。
これを靴の『ふいご効果』といいます。 十分な容積のトーボックスと、土踏まずから甲までをしっかり包み込むアーチサポートが作る前足部の空間が空気を押し出すふいごの役目をしているのです。 また、アーチサポートとヒールカウンターでしっかりと支えられた足は指を外側に広げられるため、つま先の底面まで十分に空気が流通し、指の下面や側面まで除湿することができます。 |