Q.8 お返事(2003年9月1日 21:15)
<前略>
『良質のインソールは2〜3mm厚の非常に薄い板状の構造物で、高価ですが大変丈夫な素材で出来ています。スポーツシューズの一部では、足趾部(前足部)にややしなりのある材質、屈曲部周辺に屈曲性の優れた素材、中足部から踵部までには硬くてしなりにくい材質の3種類の素材に分けて製造されているものもあります。』
スポーツシューズでないですが、例のロックポートの革靴は、インソールがizumiさんが書かれたとおりの3種類の材質になっています。
しかもそれぞれの材質の特徴はizumiさんの書かれた通りです。
やはり17800円もしたものは違うと改めて実感しています。
それに比べてH社製の方は1種類だけでした。
『ソックライナーを外してインソールをのぞいてみてください。
インソールの表面に格子状の凹みが見えるようでしたら私の推測が当たっている事になりますが、如何でしょうか。』
H社製を見てみると、爪先の方はみえにくいのでちょっとわからないのですがよく見えるかかとの部分でいえば、格子状ではないですが、 爪先から踵に対して平行に2本の大きな凹みが出来ています。
続いて、ソックライナーについてお話しします。
『やわらかすぎるソックライナーも靴の履き心地を低下させます。 一見、ソファーのように柔らかなソックライナーの入った靴ほど履き心地が悪いものです。』
なるほど、それで、7,000円くらいのニューバランスのふかふかのソックライナーを18,000円したナイキのバッシューのソックライナーに取り替えたところ、それまでの不安定感がなくなり格段に履きやすくなった経験があります。
『自動車のシートが柔らかすぎると乗り心地が悪くなるのと似ています。』
ドイツ車が硬いシートなのはそのためなんですね。といっても、ドイツ車を購入したことはなく(高価なので)、あくまで雑誌でみたりした話ですが、、、
『最後に、爪先部の当たりについて
爪先のアッパーへの当たりは、トースペースを正しく空けて履けば防ぐことが出来ます。
しかし、 設計の悪い靴(靴を上方から見た時、側面のラインが母趾及び小趾より前方で靴の中央部に向かって大きく絞り込まれた靴)は前足部で 地面を強くけりだす動作の時、母趾及び小趾の爪が靴のインナーライナー(内張り)に当たり、長い間これが続くとインナーライナーと靴下がすれて、両方に穴があきます。』
なるほど、それで、以前学生時代は布製の室内履きを学校内で履いていた時は私の足の形が人差し指が長いこともあり、まず、靴下は人差し指から穴が開いたのですが、社会人になって革靴を履くようになり、靴下はまず、親指から穴が開くようになった理由が納得いきました。
ちなみに、ロックポートにしてからは、穴が開かなくなりそれも気に入っています。
以前は、飲み会とかあり座敷席だった場合、靴下に穴が開いていないかひやひやだった思いがありました(笑)
話がそれますが、高校時代、富山にいたことと、今みたいに30.0cm以上のスニーカーが殆どなくスニーカー探しは苦労しました。
ナイキやアディダスはサイズ30cmと表示されていてもインソールが30.0cmで30.0cmの足ではきつく、唯一当時はきやすかったのは、月星化成のジャガーΣという日本製のは、サイズ30cm表示でインソールが30cm+アルファだったこともあり、よく履いてました。
『今回は説明が長くなってしまいましたが、お分かりいただけたでしょうか?』
はい、十分理解できました。感謝しております。
『Kさんから戴いたご質問は、その総てに、シューフィッティングにとっての重要な問題が含まれていましたので、思わず、力をいれて返事を書くこととなりました。 長文で読み辛いとは思いますが、じっくり読んでみてください。』
長文で読み辛いとは全然感じられず、靴やスニーカーは結構好きな方なので興味深く読まさせて頂きました。
特に大学時代、ナイキのスニーカーブームだったことと、大都市圏である東京文京区に住んでいて自分サイズのスニーカーが手に入りやすかったのと、自分のサイズが特殊だったためか流行のスニーカーが売り切れとかで既に手に入りにくい状態の時でも大きいサイズ専門店ではまだちゃんと正規の値段で販売されていて手に入ったことからスニーカーに芽生えたことがあげられます。
ちなみに、収集が目的とかでなく自分の場合は、あくまで履くことが目的でした。
A.8 追加です。(2003年9月5日 22:51)
あんなに長いメールをお出ししたのに、書き忘れが2つもありました。
腰痛の原因の一つに、靴の着用に関わるものがあります。
この事について説明することを忘れておりました。
哺乳類で直立二足歩行を常とするのは人間だけです。
チンパンジーなどの極めて人間に近い霊長類であっても、原則的には四本足で立ち、四足歩行します。
『物理の法則に従い安定した姿勢を保つためには三脚構造が必要だが、人間が2本足で直立していられる事は実に不思議なことである。』と考える医学者は現在でも非常に多く、彼らによって書かれた医学書にもまた、そのような記述が随所に見られます。
そればかりか、およそ医学者らしくなく、人間の直立二足歩行を『奇跡』とおっしゃる方までいるくらいです。
しかし、私はこの認識には大きな間違いがあると思っています。
足の基本構造を正しく理解していれば、足の裏に重心を3点で支える構造と機能があることを理解できるはずです。
この事については私のホームページにも詳しく書いてあります。(http://kutsuya.hp.infoseek.co.jp/files/shoes2.html) ただし、多少説明に不備があると思っておりますので、近く改訂予定です。(現在は改定済み)
以下は改訂版で発表予定の原稿とイラストの一部ですが、重心と腰痛の関係についても触れておりますので読んでみてください。
骨格図1をご覧ください。
足趾が正常に働いている足では、親指の指紋のセンター(指紋の渦の中心・B)と小指の指紋のセンター(指紋の渦の中心・C)と踵骨下端突起部(A)の3点が造る足の裏の三角形が構成され、この三角形で身体を支えています。(以後の説明のため、仮に『足の裏の大きな三角形』と名付けておきます。)
ところが、小さな靴や先端が足趾の開きを妨げる形状に絞り込まれた靴、そして中足部の支持が甘く中足趾節関節のアーチを支えられない靴などを履くと、足趾が正常に働く空間を確保できず、母趾球(D)、小趾球(E)、踵骨下端突起部(A)の3点が造る一回り小さな三角形で身体を支えることになります。(先程と同様、『足の裏の小さな三角形』と名付けておきます。)
足の裏の『大きな三角形』で立っている時と、『小さな三角形』で立っている時とでは、足の裏の重心位置は大きく異なります。
前者に比べ後者では、重心は大きく踵側に移動します。(注釈・三角形の重心は、各辺の中心から中線を引き、三つの中線の交点から導き出すことが出来ます。)
骨格図1でご覧戴けるように、『大きな三角形』の重心は『小さな三角形』よりも爪先側にあります。『足の裏の大きな三角形』は私の立てた理論で、現在のところ、私の読んだ全ての医学書には『足の裏の小さな三角形』で重心を支えていると書かれています。
しかし、これら医学書の説明には大きな誤認があると思います。 全ての医学書(私が読んだ限りですが。)では人が大理石のような硬い床に立っていること(添付画像をご参照ください。)前提にして、重心や立ち居(立っている時の姿勢)を標準と考えているようです。
医学書で説明されているように母趾球50%、踵50%の加重配分では後ろ向きに倒れてしまいます。
正確な計測をしたことはありませんが、前足部全体に80%、中足部、足根部に20%位の加重配分で立っているのではないかと推測しています。
距離にして数センチの重心位置の違いですが、人の直立姿勢に大きな影響を与えます。
『大きな三角形』で立とうとするとき、人の下半身は前方に大きく傾きます。そして、上半身はそれに抗するかたちで、背骨を伸ばし大きく後方に移動してバランスをとります。 このとき、頭部は伸びた背骨の真上に位置します。
この姿勢をとるとき、身体は頭部を最小の力で支えることが出来ます。
ところが、靴のトラブルから足趾に十分体重を載せることが出来ない場合、ひとは『小さな三角形』で立つことになります。
この重心位置では、下半身は後方に大きく傾きます。バランスをとるため上半身は前方に傾き、頭部は背骨よりも前に位置し、頸椎(脊柱の上部7個)によって釣られる形となるため脊柱とそれを支える筋肉に大きな負荷を与えます。
肩の僧帽筋の緊張を主因とする肩こり、腰椎の強い屈曲による腰痛などの原因となります。
しかし、ひとがサルから分かれた環境では草原地帯の柔らかな土の上に立っていたのですから体重で地面は沈みます。(添付画像をご覧ください。)
もう一つはハトメ(紐を通す穴)の数とフィット感の違いについてです。
靴のサイズ(ウィズも含めて)やラスト(金型)が適正であれば、ハトメの数が多い(と言っても、ローカットの革靴ややスポーツシューズでは8対くらいまでが適正です。)ほどフィット感は増加します。
しかし、ラストの不良などでインステップを正しくホールドできなければ、ハトメの数が多くても意味がありません。
H製品はラストの不良からハトメの数は多くても足にフィットしません。
それに比べてロックポートはラストが適正であるため、少ないハトメでもH製品より遥かにフィット感が良いのです。
足に良くフィットする靴は紐をしめたまま容易く脱ぎ履き出来ないものです。
しかし、一部(大多数かもしれません)のお店では『足入れが良い』との謳い文句でこのタイプの靴がもてはやされているのも事実です。
『脱ぎ履きが楽』なのと『履き心地が良い』事とは全く別の問題です。 私は、今まで一度も『楽に脱ぎ履き』出来て『履き心地の良い靴』を見た事がありません。
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