Q&A

A.5 RE: 回答のお礼&質問(2003年8月19日 22:31)


 最近では大きなパンプスも販売されるようになりましたが、長身の女性のほとんどは奥様同様25.0?以上のサイズを履くことに抵抗があり無理をして小さなサイズを履いたり、同一サイズで横幅の広いものを履こうとする傾向があります。
 仮に、26.0?のDウィズのパンプスと25.0?のEEEのパンプスが合ったとして、一版的に女性がどちらを選ぶかと言えば、後者になります。大きな表示サイズに抵抗があるからです。

 近年、このような女性の心理をマーケティングリサーチを通じて熟知している量販店などがメーカーにEEE以上のワイド版のシューズを作るよう要求するようになりました。
 それを反映して、現在では25.0?以上のシューズではワイド版だけしか製造していないメーカーがほとんどになりました。

 男性用の革靴などでも同様の事態になってきています。
 あまり大きな靴を履くのは体裁が悪いと思っているお客様たちに配慮するかたちで各メーカーは28.0?を超えるサイズの革靴は4Eだけを製造販売すると言ったような事が行われています。

 この傾向はスポーツシューズメーカーにも派生し始めていて、ニューバランスジャパンのようにスポーツショップよりも靴店やファッション系の販売ルートに注力しているメーカーではDウィズやEEウィズでは28.0?までしか製造、販売せず、それ以上のサイズでは4E,F,Gなどのスーパーワイド版のみを製造、販売すると言った変則的な販売方法を採っているのが現状です。

 足が大きな人はワイド版の靴を履けばよいとする発想は、本来誤っていますが、日本ではこの考え方がまかりとおっています。
 都内や神奈川県を中心に店舗を展開する28.0?以上の靴専門店などでも、基本的な品揃えは同様だと聞いています。以前、何故、ラージサイズでナローウィズ(スリム版)のシューズを販売しないのかとニューバランスジャパンに問い合わせたところ、大きな靴を扱っているお店が仕入れてくれないから販売しないのだと言われたことがあります。

 私はこの考え方には以前から反対で、ラージサイズのスポーツシューズはEE以下のウィズでの展開を心がけております。

 奥様の適正ウィズは、とのご質問への返事ですが、アーチレングス(踵から母趾球までの距離)が足長26.5?での標準的な長さである19.0?であると仮定して足幅が9.5〜10cm位とのデータを元に判断するならば、D(足幅が9.5?)〜E(足幅が10.0?)と考えられます。

 ただし、このルールで正しくフィッティング出来るのは紐やマジックテープ、ストラップ等で足を確実に固定できる革靴やカジュアルシューズに限られます。

 前回のメールでも書きましたように、パンプスなどの甲を露出したタイプの靴では踵と爪先を圧迫することにより足を靴に固定するしか方法が無く、サイズは靴の爪先の形状に依存します。

 スクエアトウやオブリックトウの靴は先端が広い構造なのでイタリアンカットトウのような先端の尖った形状の靴よりは小さなサイズでも比較的圧迫感無く履けるはずです。
 しかし、この場合においても足には大きな負荷がかかることは何ら変わりません。

 先のメールで触れた『外反母趾』『開張足』などの足の障害の原因になるばかりか、ひざや腰の障害、若年性の肩こりなど、挙げればきりがありません。

 私事ですが、現在の日本のシューフィッター制度に以前から強い不信感を持っております。

 この制度がパンプスやローファーなどを製品としてラインアップし販売するメーカーの連盟、靴工業会が当初発足させた制度であるということが問題だと考えているからです。HP上で繰り返し述べたようにパンプスやローファーの常用は足を痛めます。パンプスやローファーを常用する危険性を喚起せず、それらも含めたシューフィッティングを業務としていることに強い不満を持っているからです。

 テレビや雑誌等でシューフィッターがパンプスのフィッイングについて語るとき、それは、良い靴を正しくフィッテイングさせるのではなく、『足に害のある靴のよりましな履き方』を語っているのに過ぎないことに大きな失望感さえおぼえました。

 私たちのお店でもパンプスやローファーを販売していないわけではないのですが、現在のフォーマルファッションに付随する不可欠なアイテムであり、靴に対する日本人の認識が大きく変化しない限り『必要悪として存在』しているからです。
 私たちはパンプイスやローファーを販売する時、その危険性を告知し、足に優しいひも付きの革靴を紹介することで、お客様の選択肢を増やす努力をしています。仮に、お客様がパンプスをこの時点では選択しても、次回はひも付きの革靴を選択いただける努力をしています。

 しかし、シューフィッター制度はこれらの商品の危険性を喚起するとともに、安全な靴の普及に努めるべき制度であるべきでありながら、パンプスを例にしてフィッテイングするばかりでひも付きの革靴を例にフィッテイングしないことは、パンプスを肯定することに他ならないと考えてます。

 3年前に『靴屋のページ』を立ち上げたのも日本のシューフィッター制度では説明していない部分に光を当てたいと思ってのことでした。

 5月にKさんからメールをいただいた時、メインコンテンツである『靴と足の話し』を丁寧にご覧戴けた上でのご質問だったことを大変うれしく思いました。
 8月になり、前回お答えいたしましたことがKさんのお役に立てたことをお知らせいただいたことも、大変うれしく感じています。



Q.6 RE2: 回答のお礼&質問(2003年8月20日 17:24)


 早速の回答の方、どうもありがとうございます。

 『最近では大きなパンプスも販売されるようになりましたが、長身の女性のほとんどは奥様同様25.0?以上のサイズを履くことに抵抗があり無理をして小さなサイズを履いたり、同一サイズで横幅の広いものを履こうとする傾向があります。
 仮に、26.0?のDウィズのパンプスと25.0?のEEEのパンプスが合ったとして、 一版的に女性がどちらを選ぶかと言えば、後者になります。大きな表示サイズに抵抗があるからです。』


 妻に上の話をすると、納得しておりました。

 特に、パンプスとかの場合、サイズの「25」とか「26」とかいう数字は、靴の裏や中に書かれています(目立つところでないですが、それでも書かれていること自体が嫌みたいです。)が、ワイズの「E」とか「3E」とかはどこにも表示されていないので、余計に以前はその傾向にあったと言ってました。

 できればサイズ表示は刻印ではなく、シールのような形で剥がせる形であればいいのにとも言ってました。

 『近年、このような女性の心理をマーケティングリサーチを通じて熟知している量販店などがメーカーにEEE以上のワイド版のシューズを作るよう要求するようになりました。
 それを反映して、現在では25.0?以上のシューズではワイド版だけしか製造していないメーカーがほとんどになりました。男性用の革靴などでも同様の事態になってきています。』


 このため、最近通販のセシールや生協でも女性用は3Eとか4Eが主流で男性用は4Eが主流なんですね。

 『あまり大きな靴を履くのは体裁が悪いと思っているお客様たちに配慮するかたちで各メーカーは28.0?を超えるサイズの革靴は4Eだけを製造販売すると言ったような事が行われています。
 この傾向はスポーツシューズメーカーにも派生し始めていて、ニューバランスジャパンのようにスポーツショップよりも靴店やファッション系の販売ルートに注力しているメーカーではDウィズやEEウィズでは28.0?までしか製造、販売せず、それ以上のサイズでは4E,F,Gなどのスーパーワイド版のみを製造、販売すると言った変則的な販売方法を採っているのが現状です。』


 なるほど。そういう裏事情があったのですね。

 言われてみると、以前(1991年)私が初めてリクルート活動用に革靴を買おうとした時、銀座ワシントン靴店渋谷店で、ワシントン靴店オリジナルで30cmの靴は、横幅がかなり細く(確か2EもしくはE)かなりかっこよく見えた靴があったのですが今は、見るからに幅広のしかなくなった理由がわかりました。
 当時は、値段が確か19000円近くして貧乏学生の私には購入には至らなかったのですが、その後社会人になってお金に余裕ができて買おうとした時にワシントンに行ってももう製造されていないと言われた理由が納得できました。
今でもあの靴のかっこよさ(見るからにスマートという感じでしかも店内で履いただけですが履きやすかったのに・・)は覚えていたりします。

 そういえば、以前私の持っている靴について説明させて頂いたことがありましたが、実はこのスマートさ(お洒落さ)を求めて今の靴に至った経緯があります。



 デジカメで写真を撮ったので添付させていただきました。


添付写真1の右側がメーカー不明29.5cm(5E)の超幅広タイプ・・・A

添付写真1の左側がH社製US12/30cm(3E)のオブリークタイプ・・・B


添付写真2の左側がロックポートUS13/31cm(3E)のスクエアタイプ・・・C

添付写真2の右側がロックポートUS14/32cm(3E)のスクエアタイプ・・・D


 最初、AやBの靴を履いていたのですが、友達から「(下ろしたてだったので)スーツ決まっているけど、なんか靴かっこ悪いね(笑)」といわれ、かなりショックを受け、かっこいい靴が欲しい気持ちが湧き上がりCやDの購入に至った経緯があります。
 ちなみに、薄手の靴下用にC,冬の厚手靴下用にDと以前書いたのですが結局、Dの履きやすさになれて殆ど今はDの32.0cmのしか履いていなかったりします。

 『足が大きな人はワイド版の靴を履けばよいとする発想は、本来誤っていますが、日本ではこの考え方がまかりとおっています。 都内や神奈川県を中心に店舗を展開する28.0?以上の靴専門店などでも、基本的な品揃えは同様だと聞いています。』

 実は、上のA〜Dともそのお店(28.0?以上の靴専門店)で買っていて、そのお店とはかなり長いお付き合いなんですが、izumiさんがご指摘のとおり、最近は、お店の品揃えは本当に幅広のものばかり(この前行った時6Eがあったのには驚きました)になってますます靴探しが苦労しています。

 DのUS14のスクエアも数少ない幅が細いタイプであるのと、気に入っているため、US14でもう一足買ってもいいかなと思ってつい先日行った時も、店頭に在庫はなく、「幅の細いのはもう入ってこないかも。殆ど4Eばかりなので」と言われ、店頭には幅広のばかりだったのは残念でした。
 自分としては、29.5cmで靴が不恰好に見える超幅広より、長さは長く見えてもいいのでかっこよく見えるのがいい(お洒落)と思っているのにizumiさんのメールを読んでいるとそれが今後、ますます難しくなるのは残念です。

 実は、妻も最近このことを感じていて、以前、ナイキのレザーコルテッツを買った時、妻が友達(女性)に見せたら、国内店舗限定発売カラーで黒地に白のラインでかなりシックだったこともあり、その友達も欲しがり早速その友達は全く同じものを購入しそれを履いて私の家に遊びにきたことがありました。
 でも、妻が履いた時のコルテッツの見た目と、友達の履いたコルテッツの見た目が明らかに違って妻はちょっとショックを受けていました。
 妻のは、爪先が横に少し膨らんでボテッとしているのに対して、友達のは、コルテッツ特有の幅が狭いスニーカーにあるイメージの本当にスマートな感じだったのです。
 妻は足長26.5cmでサイズ27.5cmを履いていたのに対して、友達は普段23.5cmのパンプスを履くところ、コルテッツは25.0cmを履いていて、izumiさんの「正しいサイズ選び」のほぼ適正通りの加算具合が大きく影響していたのかなと感じています。

 ここで、思ったのですが、izumiさんの『正しいサイズ選び』の加算されたスニーカーサイズは、履きやすいだけでなく、シューズが綺麗に見える 長さだったりすると思うのですがいかがでしょうか?
 また、綺麗に見えるということはシューズに無理な伸びが発生しないということでシューズも長持ちするのではと思うのですがいかがでしょうか?

 『奥様の適正ウィズは、とのご質問への応えですが、アーチレングス(踵から母趾球までの距離)が足長が26.5?での標準的な長さである19.0?であると仮定して足幅が9.5cm〜10cm位とのデータを元に判断するならば、D(足幅が9.5?)〜E(足幅が10.0?)と考えられます。』

 妻が調べたところでは、銀座ワシントンで26.5cmや27.0cmのDサイズや、通販ではベネフィスがEサイズがあるみたいで今度これを試してみようと言っています。

 妻からこの度は本当にどうもありがとうございましたと申しており、自分からもizumiさんに感謝しております。
 もし、近くであればぜひizumiさんの店舗にいきたい気分です。

 『先のメールで触れた『外反母趾』や『開張足』などの足の障害の原因になるばかりか、ひざや腰の障害、若年性の肩こりなど、上げればきりがありません。』

 腰の障害という意味では、実は、私は29.5cmの5Eを履いていた時、毎日腰痛が酷く(実はヘルニア持ちです。)家に帰ったらサロンパスを腰に当てる日々だったのですが、現在32.0cmのに変えてから全くなくなり、靴のサイズの重要性を身にしみて感じていたりします。

 あのヘルニアの痛みが、前は一回5000円もする針治療でもなかなか回復しかかったのに靴一足でこんなに違うとは驚きです!。( 最初、32.0cmの靴を店頭で見た時、その時履いていた靴(30.0cm)と比べてみると、長さが長く女性ではないですが、やはり人前で履くのは恥ずかしい気持ちがあったのですが、ヘルニアが出ないことを考えると今はもうそんなことを考えることもなかったりします。そういう意味でもう一足同じ32cmのが欲しい気持ちがあったりするのですが・・・。)

 あと、29.5cmの5Eを買ったのも、買う前から少しずつ腰の痛みがあってそれまで履いていた2Eや3Eでは安定性が悪いのかなと思って、当時そのころから出てきた超幅広(5E)がいいのかなと思って買ったのですが、今から思うと本当に逆効果だったといまさらながら実感しています。

 ちなみに、私が、他の方よりこだわるようになったのは、この靴のサイズによって腰痛が回復したことが大きなきっかけとなっています。

 『私事ですが、現在の日本のシューフィッター制度に以前から強い不信感を持っております。
この制度がパンプスやローファーなど足の健康に反する靴を製品として連ねるメーカーの連盟である靴工業会が発足した制度で、パンプスやロー ファーを常用する危険性を喚起することもせず、それらも含めたシューフィッティングをその業務としていることに強い不満を持っているからです。』


 この部分を読んでいてizumiさんのシューフィッター制度に対する思い入れをひしひしと感じたりします。
 というのも、以前シューフィッターがいる店にスニーカーを買いに行ったことがあるのですが、IzumiさんのHPではサイズによって加算具合を変更されているのに対してそこは、どのサイズでも+1cmくらいの捨て寸という考えしかなく、私のサイズで+2cmの捨て寸を持つサイズを試し履きした時、「つま先が余りすぎていますよ」と言われるくらいでしたので。

 『3年前に「靴屋のページ」を立ち上げたのも日本のシューフィッター制度では説明していない部分に光を当てたいと思ってのことでした。
 5月にKさんからメールをいただいた時、メインコンテンツである「靴と足の話し」を丁寧にご覧戴けた上でのご質問だったことを大変うれしく思いました。8月になり、前回お答えいたしましたことがKさんのお役に立てたことをお知らせいただいたことも、大変うれしく感じています。』


 こちらこそ、izumiさんのHPに出会えて情報を得られただけでもかなりためになりうれしかったのですが、直接izumiさん自身とメールを交わすことができてなおさら感謝しております。



A.6 RE: RE2: 回答のお礼&質問(2003年8月23日 22:37)


 返事か遅れて済みませんでした。

 私の考えを正確にお伝えする必要から少し時間を掛けて考えをまとめておりました。

 まずはコルテッツのお話しから

 コルテッツはトーボックスが長く設計された靴ですので、26.5cmの足長の奥様が27.5cmのコルテッツをお履きになった場合、インソール上に足趾が一列に並ぶ横幅が十分に確保できません。
 従って、インソールの横幅を超えた足趾が甲革(アッパー)を強く横に押してこぶのように突き出してしまい、シューズのシルエットを崩してしまいます。
 シューフィッターは『爪先のスペースを1cm空けろ』と画一的に教育されているため、最近、ほとんどのお店ではこの合わせ方でシューズを薦めているようです。

 しかし、これは大変おかしなことです。 

 22.5cmの靴と32.0cmの靴で共に1cmのトーボックスが適正値だとするならば、靴全体に占めるトーボックススペースの比は22.5cmの靴で約4.4%あるのに対して32.0cmでは約3%しかないことになります。

 辞書のような厚い本のページをまとめて曲げた時、曲りの内側のページは外側のページより先端部が前にずれます。

 また、ページのずれる距離は積み重ねられたページの厚みに正比例します。

 お札や紙の枚数を数える時、この原理を利用していますので簡単にイメージしていただけると思います。

 じつは、これと同じ現象が靴の屈曲部(ボールフレックスポイント)より前方でも起こります。

 歩行中やランニング中、地面を前足部でけりだす動作の時、靴底と足趾がシューズの屈曲部より前方の部分で『曲がりの内側と外側のページの関係』になります。
 どんなにしっかりヒールカップとアーチサポートで固定された靴でもシューズが屈曲する時、指先は前方にずれるのです。

 伝統的な足袋(たび)職人が、お客様の注文で足袋を作る時、足の裏の形を和紙に写します。
 しかし、実際に足袋の底を作る時、写し取った足型をそのまま足袋の底部の型紙として使うことはありません。
 型紙では爪先に1cmほどの空間を付けた足します。 足袋が曲がる時つま先が前方にずれることを計算に入れているからです。
 この、空間は『捨て寸』とよばれ、トーボックスの日本語訳としても使われています。
 人の足長と足趾の厚みは正比例の関係になります。足が成長して大きくなれば、足趾の厚みも増します。
 足袋の『捨て寸』の長さは足袋を履く人の足長と足の厚みととを勘案してきめられます。
 これと同様、靴を製造する時、トーボックスはシューズのサイズに比例して大きくしなければなりません。
 しかし、それだけの為にしては足袋の『捨て寸』に比べトーボックスはずいぶん大きくいのではないかと疑問をもたれると思います。
 革靴やスポーツシューズのトーボックスが足袋の『捨て寸』よりも長く大きく作られているのには理由かあります。

 『捨て寸』が足袋を曲げた時、爪先部に圧迫を与えないために設けられているのに対し、ヨーロッパ型の靴のトーボックスは、爪先の保護と前足部の温度及び湿度の調整を目的に設けられています。

 靴先の大きな空間は甲革(アッパー)が直接足趾に触れないことで、夏の直射日光と高温の外気や冬の寒風と冷たい外気を皮膚に伝えにくくすることが出来ます。

 そのため、トーボックス内の空気は外気に比べ夏は低く、冬は高く保たれます。

 加えて、インステップ部がひもやマジックテープでしっかりとホールドされた靴では、トーボックスの空間は半密閉状態になります。

 この状態で、靴が地面を蹴り出す時に大きく屈曲するとトーボックスはつぶれて容積が小さくなります。
 足からの発熱や発汗で高温多湿になってゆくトーボックス内部の空気は強く圧縮されホールドされたインステップ部の僅かな隙間を通って高速で大量に履き口部に移動します。履き口部まで移動した高温、多湿、高圧の空気は大気圧の外気に放出されます。
 蹴り出しを終えた靴がつぎの着地に備えて先方に運ばれる時、トーボックスは屈曲による圧迫から開放され元の容積に戻ろうとします。
 このとき、トーボックス内は負圧となり、履き口部から外部の乾燥した低温の空気が流れ込みます。
 良い靴は靴内部の温度と湿度の上昇を押さえ足が快適でいられるように設計されているのです。
 正しく設計され、適正なフィッテイングで履かれている靴は型崩れしにくいはずです。 見た目にも美しい曲線の集合体となるはずです。
 特に、土踏まず部が正確にフィットしている靴は、足のアーチを正確にサポートして足を細く高く見せます。
 良い靴の正確なサポートはアーチの弛みによる関節の張り出し等を防ぎます。
 そのため、靴側面に関節の張り出しが原因となるしわが発生しにくなり、靴自体も非常に美しく見えます。

 Kさんからの靴の写真を拝見して、二、三気が付いたことがあります。

 ワイド版2足のシューレースがパラレルと言う形式のレーシング(ひも通し)になっているようですが、このひもの通し方ではひもを正確にしっかりと締めたり、緩めたりすることが出来ないはずです。
 これらの靴は、ひもを締めたたまま脱ぎ履きしていたのでは無いでしょうか? 
 踵の部分に変形や破損が見られるようです。

 H社製革靴の茶色い踵補強が波打ったように見えるのと右側の靴の踵内側の補強内張り部分が白く見えるのは、踵の擦れにより穴があいてしまったからではないでしょうか?



ロックポート2足も同様に、ひもをしたまま脱ぎ履きを繰り返していないでしょうか?
ひもがしまった状態で脱がれていることと、前足部の靴の変形が気になります。(ひもをしたまま脱ぎ履きしているか、蝶々結びだけを解いて脱ぎ履きを繰り返す方々の靴によく見られる変形です。)
また、これら2足はアンダーラッピングというひもの通し方になっていますが、オーバーラッピングに通しなおした方が良いと思います。(右の写真を参照ください)
そして、脱いだ時にはひもは全て開放されているのが理想です。(同じく右の写真を参照ください)
靴のひもは、履く時には十分に緩めて足を入れ、踵をしっかりヒールカップに着けた上で、下のハトメから丁寧に締めてゆき、脱ぐ時には十分に開放させてください。


 私に経験から、これだけで靴の寿命は3倍程度延びます。

 また、アーチを十分に支えることが出来るため、足底部での重心位置が前方に移動して背中を伸ばして胸を張る正しい姿勢が採り易くなります。腰痛予防に大きな効果が期待出来ます。

 ちゃんと履いていらっしたら、ごめんなさい。

P.S. 添付写真1のH社製の靴と薄茶色の靴は設計に問題があります。

 H社製の靴は必要以上に広く作りすぎている事と補強が甘いことが写真を見ただけで分かります。

 日本規格のHは本国の商品とは別物です。 日本でデサインされたHは名前だけを使用して販売しているに過ぎません。

 Hをお履きになるのなら本国製をお勧めします。

 現在は日本規格のHと差別化するため、本物は別名で販売されております。

 薄茶色の靴は爪先の形状が特に問題です。先端部がセンターにより過ぎていて外反母趾になりやすい形状です。



脱帽です。(2003年8月15日 12:46)


 まずは、写真の方、ちゃんと届きました。
 どうもお手数おかけしました。

 『まずはコルテッツのお話しから
コルテッツはトーボックスが長く設計された靴ですので26.5cmの足長の奥様が27.5cmのコルテッツをお履きになった場合インソール上に足趾が一列に並ぶ横幅が十分に確保できません。
従ってインソールの横幅を超えた足趾が甲革(アッパー)を強く横に押してこぶのように突き出してしまいシューズのシルエットを崩してしまいます。』


 なるほど。そのため、妻の友達のコルテッツは綺麗(スマート)に見えて妻のコルテッツの方は、コブラの頭のように爪先が三角に膨れ上がったスタイルに見えたのですね。
 やはり、この前教えて頂いたように28.5cmか29.0cmが適当みたいですね。

 ちなみに、妻の友達の方は、普段23.5cmのパンプスで、コルテッツは25.0cmでizumiさんの薦める適当なトーボックスに近かったのは、実は偶然だったみたいです。
 最初、友達は24.0cm位を探していたみたいなのですが、結局国内店舗限定色で24.0cmが既にどこも完売していて24.0cmで一番近いサイズで見つけたのが25cmだったのです。

 『シューフィッターは「爪先のスペースを1cm空けろ」と画一的に教育されているため最近ほとんどのお店ではこの合わせ方でシューズを薦めているようです。』

 なるほど、こういう理由があったのですね。
 以前シューフィッターの方が+1cmがベストと言われた理由がわかりました。

 『良い靴は靴内部の温度と湿度の上昇を押さえ足が快適でいられるように設計されているのです。』

 以前、トゥーボックスが+1cmのスニーカーを買ったことがあったのですが足がすぐに蒸れる原因が納得しました。

 そのシューズを履く時、薄手の靴下を履いていたにも関わらず蒸れたので、汗が靴下で吸収できないかと思い、厚手の靴下を履いたこともあったのですが、結局蒸れて四苦八苦してました(特に蒸れる=汗臭くなるとなり、病院とかでスリッパに履き替える時とかかなり靴下が臭わないか気にしてました。)。
 それに比べて、今履いているコンバース34cmやコルテッツ33cmは全く蒸れず、特にコルテッツはレザー製なのに例え夏場に履いても蒸れなく驚いています。

 『Kさんからの靴の写真を拝見して、2〜3気が付いたことがあります。
 ワイド版2足のシューレースがパラレルと言う形式のレーシング(ひも通し)になっているようですが、このひもの通し方ではひもを正確にしっかりと締めたり、緩めたりすることが出来ないはずです。
 これらの靴は、ひもを締めたたまま脱ぎ履きしていたのでは無いでしょうか?』


 脱帽です。実はまったくその通りです。
紐を緩めて結びなおしても結局紐がしっかり締まらない為、それだったら締めっぱなしでいいと思うようになり締めたまま脱ぎ履きしてました。

 『踵の部分に変形や破損が見られるようです。
 H社製革靴の茶色い踵補強が波打ったように見えるのと右側の靴の踵内側の補強内張り部分が白く見えるのは、踵の擦れにより穴があいてしまったからではないでしょうか?』


 今回メールを頂き、特にこの部分に脱帽しております。
 というのも、写真では、なかなか見えずらいのに、見事、踵内側部の穴が開いていることを当てられたからです。
 izumiさんをますます尊敬しております。
 実は、今まで履き古した皮靴は大抵踵内側部に穴が開いています。
 あと、内側に穴があく部分としては、


  1. 親指の爪が当たる部分
  2. 小指の爪が当たる部分
  3. 親指の側面が靴の内側に当たる部分

 があります。特に1は靴によっては、外から「親指の爪はここですよ」といわんばかりの痕(しわ?)が付いたりしたこともありました。

 ちなみにこれは親指の爪の根元が歩くたびに痛かったです。
 そういう意味でH社製革靴の親指に余裕のあるオブリーク型30.0cmを選んだのですが結局1の箇所に穴が開き同じでした。
 その点、ロックポートの32.0cmのは、本当に親指の爪は全く当たらず6ヶ月履いた今でも親指の爪の箇所の靴の内側に、穴が開かず履きやすいです。大抵、いつも1ヶ月も履かないうちにこの箇所は穴が開いていただけに驚いています。

 『ロックポート2足も同様に、ひもをしたまま脱ぎ履きを繰り返していないでしょうか?
 ひもがしまった状態で脱がれていることと、前足部の靴の変形が気になります。(ひもをしたまま脱ぎ履きしているか、ちょうちょ結びだけを解いて脱ぎ履きを繰り返す方々の靴によく見られる変形です。)』


 この点もその通りでロックポートも実はひもをしたまま脱ぎ履きしています。
 またまた脱帽です。

 『また、これら2足はアンダーラッピングというひもの通し方になっていますが、オーバーラッピングに通しなおした方が良いと思います。(添付ファイルshoelace1を参照ください)
 そして、脱いだ時にはひもは全て開放されているのが理想です。(添付ファイルshoelace1を参照ください)』


 早速変更してみました。こころもちかかとのホールド感がアップしたように感じています。
 どうもありがとうございます。

 『靴のひもは、履く時には十分に緩めて足を入れ、踵をしっかりヒールカップに着けた上で、下のハトメから丁寧に締めてゆき、脱ぐ時には十分に開放させてください。
 これだけで靴の寿命は3倍程度延びます。』


寿命が3倍であればますます変更したいと思います。
特にこのロックポートのはデザインも気に入っていて履きやすく、もう靴のヒカリでは入荷しないと言われたこともあり、できるだけ長く履きたいと思っているからです。
靴底が減ったら、靴修理に出してでも履きたいと考えています。
それとともに、実はロックポートのは、1足17800円と自分が今まで購入した革靴では一番高かったのも理由です。
恥ずかしながら、値段が高かったこともあり、なかなか踏ん切りが付かずこの靴のために3日連続でお店に通いつめたりしました。(笑)

『P.S. 添付写真1のH社製の靴と薄茶色の靴は設計に問題があります。必要以上に広く作りすぎている事と補強が甘いことが写真を見ただけで分かります。』

 この点もずばりそうです。補強がほとんどない感覚です。

 『特に薄茶色の靴は爪先の形状が問題です。
 先端部がセンターにより過ぎていて外反母趾になりやすい形状です。』


 センターによりすぎの点も脱帽です。
 上から見た感じではわかりづらいのですが、下から見ると、靴底の中心線にあわせると、かなりカーブしているのです。
 実は、この薄茶色のは、超幅広なのに、なぜか小指が当たりおかしいと感じていたのですがそういう理由があったのですね。
 あと、H社製の黒の方も、インソールに悩まされました。

 最初の頃は、柔らかくいい感じだったのですが、履き続けるうちに靴の中心部が沈み込んで元に戻らず、その反動で相対的に靴の外側に行くほど 盛り上がってしまい、最後の頃は親指と小指が靴の内側にあたり特に小指側の盛り上がりが強く、小指の痛さはつらかった思い出があります。

 インソールも店頭で履いた時ふかふかで気持ちいいというのも考え物だなと感じました。ヘタリの問題かも知れませんが、、、

 ちなみに、上記2点とも安かったのも原因ありなのかなと思っています。
 薄茶色の方は、7800円でH社製は9800円でした。
 特に薄茶色の超幅広は、中敷には「made et Italy」とあるのに、靴底には「Made in Japan」と書いてあったりしましたし。
 今から思うと、この2足(薄茶の超幅広とH社製オブリーク)を履いていた間にヘルニアが悪化し1回5000円の針治療を10回以上したことを考えると1週間の内5日履く靴にはやはりそれなりの値段をかけてあげたほうがよかったと実感しています。
 特にH社製は、靴底の減りが早く、最後は、ちゃんと立っているのに自然に後ろに倒れ掛かるくらい磨り減ってしまいましたし。

ps.革靴の紐穴の数でよく4つ穴や5つ穴とかあったりするのですが穴の数が多いほうが、紐をきちんと締めることができるのかなと思ったりしたのですが、そういうこともなさそうですね。
 実際、自分の場合、4つ穴や3つ穴の方がしっくりきて、5つ穴だと甲が高くて(5つ目の紐穴部分の皮が余る)甲が低い自分にはあまり適当でなかったことがあったので。



A.7 返事が遅れてすみません。(2003年9月1日 21:15)


 このところ新学期の準備で忙しく、返事が遅れて済みませんでした。

 まずは、『爪先に1cmの空間を』と言うシューフィッターの”切り口上”の問題点から、お話ししたいと思います。

 私自身、シューフィッターと直接話す機会はほとんどありませんが、お客様の中にはシューフィッターにフィッティングしてもらった経験がある方がかなりいらっしゃいます。
 シューフィッティングしようとする時、それらの方々から度々『シューフィッターから「つま先の空間は1cm空ければよい。」と言われたのに、貴方の店のフィッティングでは爪先を空けすぎる。これでは靴が大きすぎていやだ。』とのクレームをお受けします。

 現在ではシューフィッター制度はマスコミなどを通じ広く一般に認知され、一定の権威を持つまでになりました。

 そのため、シューフィッターの発言の重さは絶大で、シューフィッターにフィッティングしてもらった経験がある人たちに、靴の先端空間(トーボックス)の意味、踵から母趾球までの距離で靴のサイズを決定するシューフィッティング法を理解していただくのには、いつも大変な労力を要します。
 誤った知識を修正するためには靴造りの原点にまで遡って一から説明をしていかないと理解していただけないからです。
 当店をよく知るシューズメーカーや代理店の方々からは『フィッター資格を取ればもっと楽な商売ができるから』と随分以前からフィッターになることを進められてきましたが、このこと(トーボックスに付いてのフィッターの説明)一つを例にしても、時間を掛けてフィッター講習を受け、高い機材を購入してまで取得する資格ではないと考えて独自の道を歩んでまいりました。
 シューフィッターの教育をされている方々には、もっと基本的な部分の勉強に力をいれ、質の高いフィッターの養成をしていただけるよう、切に願って止みません。

 つぎに、H社製革靴の品質に付いてお話ししたいと思います。すこし長い話しになりますが、ご勘弁ください。 

 ブランド名が一般に認知されている商品の中には、国内量販店チェーンやデパートのバイヤー(仕入れ責任者)からの要望で、材質を落として低価格化した商品を提供しているメーカーや輸入代理店が幾つかあります。

 <中略>

 これらのことをふまえての私の推測です。

 Kさんからのメールに書かれていた『H社製の靴の中心部が沈み込んで元に戻らず、その反動で相対的に靴の外側に行くほど盛り上がってしまい』とのトラブルの原因はインソールの材質に起因すると思います。
 一般にインソールと言われているパーツはソックライナーと言うのが正式名称です。
 スニーカーや革靴の、ソックライナーを取り外した内側の部分が本当のインソールです。
 良質のインソールは2〜3mm厚の非常に薄い板状の構造物で、高価ですが大変丈夫な素材で出来ています。
 スポーツシューズの一部では、足趾部(前足部)にややしなりのある材質、屈曲部周辺に屈曲性の優れた素材、中足部から踵部までには硬くてしなりにくい材質の3種類の素材に分けて製造されているものもあります。
 インソールは靴のフレームとも言える部分で、靴のねじれや変形を防ぎ、靴に安定感を与えます。
 良質のインソールは小石などを踏んだりした時、靴底からの突き上げを防いだり、不規則な路面を歩く時、歩行の安定を保ちます。
 コストを削減した低価格の商品を作ろうとするとき、外から見えないこの部分の材質を落とすことがよく行われます。
 暫くは、良質な靴と大差のない履き心地がえられますが、時間の経過とともに荷重のかかる部分が沈んできます。


 たぶんH社製品も、この部分の材料をかなり落としたのだと思います。

 日本規格のH社製品は、アウトソールの材質も大幅に落とているようです。

 そのため本国製で使われていた高品質の底材に比べ薬品や酸、アルカリへの対抗性と摩擦に対する耐久性が大幅に低下してしまいました。
 それだけではなく、材料費節約の為、アウトソールの構造自体も変えてしまいました。
 本国製H社製品のアウトソールは内側が空洞になっていて、縦横に走る格子状の薄い壁でインソールを支え、インソールからの強い力を受けるとこの壁がコの時にたわみ衝撃を吸収する構造になっていました。
 そのため、ソリッドなアウトソールに比べ、軽量でクッション性に優れていました。
 ところが日本規格のH社製品では、材料費節減の為、下からインソールを支えるはずの格子の数を減らしてしまいました。
 先に述べたインソールの材質を落としたことと、格子の数を減らしたことでソックライナーにかかる荷重を支えきれず変形し、内側の空洞を維持できずに中心部が陥没してしまったものと思われます。ソックライナーを外してインソールをのぞいてみてください。
 インソールの表面に格子状の凹みが見えるようでしたら私の推測が当たっている事になりますが、如何でしょうか。

 続いて、ソックライナーについてお話しします。

  やわらかすぎるソックライナーも靴の履き心地を低下させます。
 一見、ソファーのように柔らかなソックライナーの入った靴ほど履き心地が悪いものです。
 自動車のシートが柔らかすぎると乗り心地が悪くなるのと似ています。
 靴の中での足の安定をさまたげ、靴と足との間にずれや摩擦を発生させてる原因になります。
 良いソックライナーは足と接触する表面の部分は柔らかでも、その下の層では、徐々に足型になじみながら、それでいて必要以上に沈み込まない ような材質で出来できています。

 最後に、爪先部の当たりについて 

 爪先のアッパーへの当たりは、トースペースを正しく空けて履けば防ぐことが出来ます。
 しかし、 設計の悪い靴(靴を上方から見た時、側面のラインが母趾及び小趾より前方で靴の中央部に向かって大きく絞り込まれた靴)は前足部で地面を強くけりだす動作の時、母趾及び小趾の爪が靴のインナーライナー(内張り)に当たり、長い間これが続くとインナーライナーと靴下がすれて、両方に穴があきます。
 たとえ踵から母趾球(ボールジョイント)までの距離を正確に合わせて履いたとしても、このような靴の場合、トラブルは解決することはできません。
 
 今回は説明が長くなってしまいましたが、お分かりいただけたでしょうか?

 また、返事をお返しするのが大変遅れましたことをお詫び申し上げます。  Kさんから戴いたご質問は、その総てに、シューフィッティングにとっての重要な問題が含まれていましたので、思わず、力をいれて返事を書くこととなりました。
 長文で読み辛いとは思いますが、じっくり読んでみてください。




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