9.子供の足と靴

 人は誕生から21〜22歳くらいまで成長を続けます。しかし、成長速度は均一ではなく、急激に成長する期間と緩やかに成長する期間に分かれます。急激に成長する時期を成長期といい、人には0歳から3歳までの第一次成長期と12歳から17歳までの第二次成長期との2回の成長期があります。

 第一次成長期は赤ちゃんが子供になる期間で、第二次成長期は子供が大人になってゆく時期であると言われています。それぞれの成長期は、身体が内的及び外的刺激を受け、成長を促すホルモンやリンパなどの活動が活発化することに起因するといわれます。

 また、人の身体は全体が均一に成長するのではなく、下半身は上半身よりも早く成長し、17歳くらいで成人の体型にまで達し、成長を止めます。下半身の一部である足の成長も17歳くらいまでで終了します。

 成長過程の足は、その特徴から『乳児期の足』『乳幼児期の足』、『幼児期の足』、『少年期の足』に分類することが出来ます。

 以下に各期の足の特徴、次の期への足の変化の過程、そして各過程における適正な靴について説明していきます。



 A.乳児期の足

  a.乳児期の足の特徴


 出産直前の胎児の足は、既に成人と同等の基本的な構造を備えています。そして、成人の足以上に高い自由度の動きをすることが可能です。
 赤ちゃんのいるご夫婦ならば、生まれたての赤ちゃんの足趾が成人の足指よりも多彩に動くことをご存知でしょう。
 また、赤ちゃんが健康に生まれてきたかどうかを確かめる新生児検査のひとつとして、産婦人科医が赤ちゃんの足の裏を硬い木や金属の棒で「し」の字に押して刺激し、足指の反応を見る検査を施すのをご覧になった方もおられるでしょう。この検査で、正常な赤ちゃんの足には母趾が背屈(甲の方向に反り返る)したり、第2趾から第5趾までが扇型に開く反応が現れます。中枢神経系が正常であるか否かを調べる検査ではありますが、同時に、赤ちゃんの足が正常に機能しているのか否かの確認も出来ます。(注1:バビンスキー反射)

 

  新生児の足(生後2週間)  


安静時の赤ちゃんの足。

紅葉の様に指が開いてい
ます。


足趾の屈折

足の裏の指の付け根を刺激
すると赤ちゃんは足趾を屈
折させます。


バビンスキー反射

足の裏から見ると足趾が大き
く開くのが確認出来ます。


バビンスキー反射

内足側から見ると母趾が上
方に伸展しているのを確認
できます。



 医学書などには新生児の足に土踏まずはないと書いてありますが、これは正しくありません。土踏まずは既に形成されています。仕事柄何千人もの新生児の足を見てまいりましたが、肉好きが良くて土踏まずが目立たない赤ちゃんはいても、偏平足の赤ちゃんを見たことはいまだかつてありません。
 しかし、健常な足の新生児でもすぐに直立歩行をすることは出来ません。新生児の身体には直立に必要な骨強度、筋力、靭帯の強度などがまだ備わっていないからです。そのため、無理やり立たせようとすると土踏まずが潰れて足の裏は扁平になります。

 骨強度は骨密度と骨細胞のカルシューム備蓄量に比例します。

 新生児の骨の内部では、骨の成長のため、骨細胞が盛んに増殖しています。そのため、新生児の足の骨には十分な骨密度があります。

 骨は、骨細胞が外的な刺激を受け細胞内にカルシュームを十分に蓄積することで屈強になります。しかし、半無重力状態で外的刺激の極めて少ない胎盤の内側で成長してきた新生児の骨細胞は、外的な刺激が極めて少なく、その為、カルシュームを僅かしか備蓄していません。

 また、筋肉や腱、靭帯なども、そのほとんどが未発達のまま生まれてきます。  
 
 筋肉、腱、靭帯なども、その発達には外部の刺激を必要とします。骨同様、外的刺激の少ない母胎内で成長した新生児の身体では筋肉、腱、靭帯などは未発達で直立に必要な強度を持ちません。
 
 直立に必要な骨強度、筋力、靭帯の強度は後天的に外部からの多くの刺激によって促され獲得するべきものなのです。

   乳児の骨細胞は出産後重力による負荷を受け、少しずつカルシュームを吸収・蓄積して骨は硬く(化骨)なってゆきます。

 新生児は手足や首をしきりに動かします。特に授乳時に手足を大きく屈伸させます。この動きはミルキングアクション(Milking Action)と呼ばれ、四肢の血液循環を促進させているといわれています。この運動により全身の骨格系、循環器系の組織の発達が促されます。
 この動きは徐々にダイナミックになり、乳児はやがて『寝返り』が出来るようになります。

    乳児は『寝返り』が出来るようになると手と足を使って身体を反らせ、より高い位置から周囲を見ようと試みるようになります。この動きは脊椎の骨密度を増加させ、背筋や腹筋など身体を支えるのに必要な筋肉を発達させます。

  b.乳児の足と靴下

 乳児期に靴は必要ありません。乳児の与えられた環境にもよりますが、足趾の成長の妨げにならないよう、靴下もなるべくならば履かせない方が良いでしょう。足趾を細かく動かすことが足部の発達は言うに及ばず、下半身全体の発達に大きく影響するからです。寒冷時に体温維持のため靴下が必要な場合には、正しい靴下の着用が肝心です。爪先を乳児の足の形に伸ばし、指先の動きを妨げないように心がけなければなりません。靴下が少しきついだけで乳児の足趾は変形を始めます。

 注:1(Babinski's reflex バビンスキー反射: この反応は2歳未満の乳幼児に現れた場合は中枢神経系が健常であることを示しますが、2歳児以上の年齢でこの現象が現れた場合、神経伝達系統に異常があることを示します。本来、バビンスキー反射は新生児の神経系に係わる検査に利用されるべきものですが、足趾が正常に動くことの証ともなります。) 戻る



 B.乳幼児の足

  a.外部の刺激と乳幼児の足の発達

   乳児は手と足で自身の身体を支えられるようになると『はいはい』をはじめます。この時期から乳児は『乳幼児期』に入ります。

 『はいはい』は非常に重要です。『はいはい』はからだ全体を使う運動だからです。『はいはい』は四肢の発達を促す刺激となり、背筋や腹筋のような上体を支える筋肉ばかりでなく、立って歩くために必要な腕や脚の筋肉を発達させます。

   乳幼児は『はいはい』という移動手段を得て、初めて自分自身で行動できるようになります。

   乳幼児は『はいはい』をすることで外部環境からより多くの情報を吸収すると共に、立つために必要な筋肉や骨格の成長に必要な刺激を受け続けることになります。

   自分自身で行動できるようになると、乳幼児は目から入る新たな情報を求めさらに行動範囲を上方に拡大しようとじます。

   乳幼児の関心は『はいはい』で得られる水平方向の視覚情報だけに留まらず、上方にも向けられるようになります。乳幼児はより高い位置からの視覚情報を獲得するため、近くにあるものにつかまって立ち上がろうと試みるようになります。

   乳幼児はやがて『掴まり立ち』ができるようになります。

   『掴まり立ち』が出来るようになると、新たな角度からより広範囲の視覚情報がはいってきます。
    乳幼児はそれらを手や口で確認しようとして、何かに掴まりながら横への移動(伝い歩き)を試みます。最初は上手に移動でいませんが、徐々に、そして確実に『伝い歩き』できるようになります。やがて支えなしで歩く(直立歩行)ことが出来るようになります。

 乳幼児が直立歩行できるようになるのには、個人差はありますが、誕生から10ヶ月から18ヶ月くらいかかります。

 乳幼児は『はいはい』、『掴まり立ち』、『伝い歩き』の時期を通じて直立歩行に必要な十分な刺激を受けることが出来ます。この刺激が立ち、歩くのに必要な身体の発育を促し、乳幼児の『直立歩行』を可能にします。

 『掴まり立ち』の出来ない乳幼児を無理やり立たせてはいけません。身体が必要な発達をしていない状態で立たせることは、かえって発育の障害になります。機が熟せば、乳児は自発的に『掴まり立ち』が出来るようになるものなのです。

  b.乳幼児の足と靴、靴下

 人はアフリカの草原地帯でサルから進化したと考えられています。そのため、人の足は草原地帯の柔らかな土壌の上を裸足で歩くのに最適な構造をしています。歩行環境が草原地帯の柔らかな土壌に近ければ、乳幼児期の足の発達には、裸足での生活が良いでしょう。室内も床が畳であれば素足で良いと思います。着地時に基底面の凹凸に合わせて沈み込む畳の柔軟性と適度な弾力性が軟らかな土に近い歩行環境を作ってくれているからです。しかしながら、現在では歩き始めたばかりの子供を裸足で遊ばせておく環境を確保するのはきわめて難しいことです。1960年代と現在では居住環境も大きく変化し、畳の部屋がフローリング(板の間)に入れ替わってきています。フローリングは畳に比べ弾力性が極めて低く、歩行時、基底面(足の裏)の床への沈み込みはありません。フローリングは乳幼児の足の発達には適していません。欧米にはフローリングのような硬い床の上でも幼児の足支え、成長を妨げないように工夫された靴があります。現在、一部の商品が日本でも販売されていますが、乳幼児期の足の大切さが認知されていないことと、短期間しか履けない靴にお金をかけることを良しとしない日本では、まだあまり普及していません。

 右の写真はアメリカNIKE.INC製の『NIKE FIRST CRAWLER』です。CRAWLER(這う人)の名のとおり『はいはい』をし始めた頃から履き始める乳幼児用のファーストシューズで、樹脂製のアウトソールとニット製の靴下状のアッパーから出来ています。骨格を結束する靭帯やアーチを高く引き上げる働きをする筋が未発達の状態の乳幼児の足を足の裏から側面にかけて強力に支えるため樹脂製のアウトソールが中足部から足根部にかけて上方に立ち上がりクレードル(ゆりかご)状のイクステンデットヒールカウンター構造をしています。
 爪先部は指先の上方空間を確保するためアウトソールと一体のトウキャップを採用しています。
 また、トウキャップの一部は甲の一部に延長されていて外部からの偶発的な衝撃(打撲等)から足を守るトウガートとしての役割も果たしています。
 トウキャップとアウトソールの間には、内足側と外足側に大きな切れ目を空けていて、そこに伸縮性の高いニットの部分だけを残すことで足趾の横方向への開き出しを妨げない工夫がなされています。  
 次の写真はこのファーストシューズを曲げたものを内足側から見たところです。
 大きく屈曲した部分に乳幼児の母趾球が来るように設計さています。
 その先でもう一箇所上方に曲がっている場所があります。この手前までが足趾の収まる場所で、その先はアッパーと足趾との間のトウボックスと呼ばれる空間です。 足趾を保護するためや、足趾を外気の温度変化から隔離して足趾の皮膚温度を安定させるため、シューズを屈曲させたときにこの空間の容積が変化することを利用してシューズ内部を換気させる(ふいご効果)必要から設けられています。  
 トーボックスの部分でアウトソールを上方に曲げてあるのには理由があります。それは、歩行時に脚を高く持ち上げることがまだ上手に出来ない乳幼児が些細な床面の突起に爪先を引っ掛けて転倒するのを防ぐためと、足趾で直接床を踏む感覚を妨げないためです。    
 次の写真はこのファーストシューズを底面から見たところです。踵の部分がカップ上になっていて、土踏まず部もややくびれた形をしています。これは、乳幼児の足の裏の凹凸に合わせて樹脂で出来たソールの上面を成型してあるためです。これによって乳幼児の足の裏は柔らかな土壌の上で歩くときと同等に足の裏全体で加重を負担することが出来ます。

 ポインターを写真に当てると乳幼児の足型のイラストと重ねて表示されます。乳幼児をお持ちの方はファーストシューズを履かせるときの目安としてご覧ください。(ブラウザがアクティブなコンテンツをブロックしている状態では、ブロックを解除しないとご覧いただけません。)


 外出時を中心に設計されたファーストシューズでは靴下の装用を想定して設計されていますが、この靴(NIKE FIRST CRAWLER)は専ら室内での使用を前提として設計されているため、素足で着用します。
 



 C.幼児の足



  a.幼児の足の特徴


 第一次成長期の終わる満3歳頃に足も『幼児期』に入ります。
 活動領域も室内中心から屋外へと拡大してゆき、運動量も急激に増加します。そのため、幼児期の足は増大する運動量に比例して徐々にたくましくなってゆきます。骨組織は成長を続けながら、徐々に組織内のカルシューム備蓄量を増加させてゆきます。
 神経組織や筋肉組織も発達し、しなやかな歩行が可能になります。 この期間はもっとも足趾が発達する期間です。
 しかし、体全体の比から見ると下半身は未だ上半身に比べて小さく、骨と骨とをつなぐ靭帯も未成熟なため、これらの働きで維持されなければならない足のばねも脆弱です。
 加えて、幼児期の足の骨密度も成人に比べてまだ低い状態です。骨密度が高まり主要な足の骨がX線フィルムに映し出されるようになるのは8歳を越えたあたりからです。

  b.幼児の靴

 4歳から8歳前後までの子供たちからだに靴は大きな影響を与えます。乳幼児期の子供たちは室内にいる時間が多く、靴を履いている時間が少ないため、靴による子供たちの足とからだへの影響は最小限に抑えられています。

 しかし、幼稚園や保育園に入園する年齢に達すると、園への行き帰り、運動場での遊び時間、園舎内での生活の殆ど全ての時間に靴がかかわってきます。そのため、正しい靴を正しい方法で子供たちに履かせることが出来ないと、彼らの足の変形リスクは増大します。
 以下、子供靴を上履きと外履きに分けて良い靴と悪い靴、正しいサイズの選び方などを説明します。

     (i) 上履き

 上履きがどんな良いものであっても、正しく履かれなければ足にとっては有害なものになります。
 サイズの選択を誤って本来のサイズより小さく履いていたりすることもまた足にとって有害です。
 母親が気づかない間に子供の足が大きくなり、園内に置いておいた上履きが合わなくなってしまった、といったこつは成長の早い幼児には常に起こりうることです。
それを見過ごすことにより子供な足が変形をはじめる、といったことは珍しいケースではありません。

 園指定の上履きが足に良くない設計のものであれば、子供の足の変形を防ぐことは不可能です。
 保育園、幼稚園をはじめとして小、中、高校で最も多く履かれているタイプのスクール上履きは、そのほとんどが足を変形させる要素を含んでいます。
   上履きが子供たちの足に与える影響に関し学校関係者の認識は非常に低く、上履きの選定にあたり彼らの選定する上靴の優先事項は、子供たちの足の健康ではありません。 低価格であることと脱ぎ履きの簡便です。 そのため、長い間、前バンドや前ゴムと呼ばれるタイプ(写真左側)の上靴が日本中の幼稚園や小学校で採用されてきました。
 しかし、このタイプの靴は足の保護のために最も重要なインステップ(足の甲から土踏まずに掛けての外周)部のサポート性が非常に低く、脱げ易いため、ほとんどの子供たちは靴のサイズを小さくして足全体でフィットさせる履き方をしています。
 この履き方では、足趾は靴から強い圧迫を受け、容易に変形を始めます。近年多くの子供たちの足に変形の症例が数多く見られるようになりました。そのため、これに対し一部の整形外科医や足病医がマスコミを通じて警告を発し始めました。

 この警告に呼応する形で一部のメーカーから靴による足の変形や障害に着目し、外反母趾対策と銘打ったマジックテープのストラップ付上履き(写真右側)が発売されるようになりました。


   (ii) 外靴

 屋外で履く靴も、上履き同様、この時期の子供たちの足の健康に大きく影響を与えます。

 しかし、日本では正しく履くことのできない足に有害な靴が市場に氾濫していて、靴によほどの知識が無ければ、足に良い靴は見つけられません。

 足に良くない靴がこれほど多く市場に流通するようになったのはそれなりの理由があります。
 原因を一つ一つだたどってゆくことで、その理由と本当に足に良い靴にたどり着くことが出来ます。

 以下、順を追って説明いたします。

 足に有害な靴がこれほど氾濫するようになった第一の要因は父母たち自身の靴と足に関する情報不足、知識不足です。

 大多数の父母たちは靴の紐は結んだまま脱ぎ履きするものだと考えています。 

 実はこれが日本において子供靴を含む殆ど全ての靴を悪くしていった最大の原因なのです。

 まるでスリッパーを履くように、靴紐を締めたまま、あるいはマジックベルトで足を固定したままの状態で靴を脱ぎ履きする悪い習慣を出発点として次々とおかしなことが起こります。

 靴は本来かかと部にあるヒールカップとインステップ部にあるアーチバンテージを紐やマジックテープで拘束する構造になっています。 ところが日本では紐やマジックを締めたまま靴を脱ぎ履きすることがなかば常識化しています。 殆どの人々はこの間違えた考えに基づき、靴の紐を締めたまま脱ぎ履きできる靴を『履きやすい靴』、『足入れの良い靴』として捜し求めるようになります。
 お客様からこのような靴を求められた店員に正しいシューフィッティングの知識がなければお客様の履き方に問題提起ができないばかりか自店のバイヤーにお客様からの要望としてこれを伝えます。 すると、量販店のバイヤーたちは靴メーカーに脱ぎ履きの容易な靴を作るよう圧力を掛けます。

 大口の取引先を逃さないため、靴メーカーは脱ぎ履きの簡単なシューズを製造し、量販店に提供するだけではなく一般店にも売り込みます。

 マジックテープや紐を締めたまま脱ぎ履きできる靴では前足部が爪先まで抵抗なしに挿入できるよう、インステップ部の内周を広げ、かかとの出し入れを楽にするためヒールカップを履く人のかかとよりも大きく、そして、上方に向かって開いた形に成型します。
 このような靴は足の出し入れは容易になりますが、足を確実にサポートできなくなります。店頭での靴選びで多くのお客さまは靴を足にとどめておくため爪先いっぱいの靴を選ぶようになります。
 靴の先端部いっぱいに足を詰め込むと人々は足先がきついと感じます。
 しかし、サイズを上げて試し履きをすると靴がゆるくて脱げてしまいます。このとき、大概の人々は靴が小さいからだとは考えないで、靴の幅が細いからだと勘違いします。 そして、店員にもっと広い靴は無いのかたずねます。 店員たちはバイヤーを通じてもっと幅の広い靴を作るようメーカーに要望します。メーカーはこの要望に沿って幅広の靴を製造し、販売します。

 しかし、ヒールカップが履く人のかかとより大きく、インステップ部も広すぎて足の甲から土踏まずまでを正確にホールドしない靴の横幅を広げることは足を拘束するすべのない靴を作ることになります。 この靴を脱げないように履くためには、サイズを何段か下げて靴の先端いっぱいに足先を入れた状態にしなければなりません。足趾を圧迫から守るため横幅を広げたはずの靴が爪先の圧迫無しに靴を足につなぎとめて置けなくなります。
 当然、足先の変形は進行し、外反母趾などの足の障害を発症させます。 

 足の障害に悩む人々はシューフィッターの資格を持った店員のいる店に出かけてゆきます。ほとんどのお店が3万円以上もする『足の障害を予防する』と称する幅広の靴をそろえ、子供用でも1万円を超える価格です。 また、オーソティクスインソール(足底板)を加工・調整して販売しています。 殆どがドイツ、イタリア、イギリス製です。これらの靴は正確なフィッティング技術であわせられるならば優れた履き心地を得ることができる製品です。 しかし、日本におけるシューフィッターはその殆どがシューフィッティングの基本である踵後端から母趾関節までの距離でサイズを選択し、足幅長でワイズを選択する技術を知りません。 ヨーロッパの伝統的な靴職人は爪先の余裕を親指の横幅(約1インチ/2.54cm)以上あけることを心がけていました。 親指の法則(Rule of sam)と呼ばれています。ところが日本の殆どのシューフィッターが靴の爪先スペースを1cmと決めてシューフィッティングしています。 そのため、彼らのシューフィッティングでは靴の屈曲するライン(shoe flex line)よりも足の屈曲するライン(ball flex line)が爪先側にずれて合致しません。ラインが合致しないと靴は曲がりにくくなります。加えて、このようなシューフィッティングでは相当小さいサイズを履くこととなるため、ヒールカップの大きさが履く人の踵に比べ小さくなり、フィットします。

 この二つの理由から歩行するときかかとにヒールカップが追随しなくなります。そしてそれがかかとのマメ原因になります。

 シューフィッターはサイズの合っていない靴をインソールを加工することでフィットさせようとします。しかし、効果は殆どありません。

 JIS規格における靴のサイズ規定は実にいい加減なものです。 足の長さでサイズ(足の縦の長さ)を規定し、中足趾節関節の外周でウィズ(足幅)を規定しています。 一見合理的な基準のようですが、実はここに大きな問題が隠れています。 足趾の長さが人によって異なるため、足の長さで靴のサイズは規定できません。 靴との相関性があるのはかかとの後端から母趾球までの長さ(arch length)の方なのです。 ウィズ(足幅)も中足趾節関節の外周ではなく、母趾から小趾までの横幅のほうがより重要です。

 現在のJISの靴の規格ではサイズは目安でしかありません。

 子供の足に正確に靴をフィットさせる技術を殆どの靴店員、シューフィッターは持ち合わせていません。

 子供達の足の変形は年々増える傾向にあります。




 D.少年期の足


  a.少年期の足の特徴

 少年期の足は幼児期に比べ骨細胞内のカルシューム蓄積量が増加します。
 8歳頃には全ての足の骨がレントゲンに投影されるようになり、あきらかな骨強度の向上が見て取れるようになります。
 運動機能も発達し、大人以上に動き回るようになります。
 外での遊びやスポーツによる刺激で下半身の成長は上半身に先行する形で進みます。
12歳ころからは第二次成長期にはいり下半身の成長は17歳の誕生日くらいまで続きます。
 上体の成長は20歳過ぎまで続き成人の体型となります。
 従って、7歳ころから20歳位までは同一身長の大人よりも下半身が大きい状態にある、と言うことができます。
             同一身長の大人と足のサイズを比較してはいけません。


  b.少年期の足と靴

 少年期の足は同一身長の大人よりも大きいものだと理解するとともに、急激な成長で履いている靴が直ぐに合わなくなる、と言うことも理解しなければいけません。
 下半身の骨格が成長している17歳の誕生日くらいまでは多少靴がきつくても足に痛みを感ずることはありません。
 足が痛くなる前に骨格の一部が変形を始めます。
 靴がきついと感じたときは既に足の変形が進行していて、外反母趾や巻き爪、ハンマートーなどになっている可能性があります。
 鼻緒のある下駄やサンダルは多少小さくても問題はありませんが、足先を覆うタイプのサンダルや靴はサイズが合わなければ自動的に足先の変形を招きます。
 成長期の足に小さな靴を履き続けることは、足だけに留まらず体全体に様々な障害を引き起こします。
 体に痛みや不具合が生ずるばかりか、後々治療にかかる費用は靴を買い替える費用よりはるかに大きな金額になります。

 不経済なようですが、良質の靴を正しく履く習慣と成長に合わせこまめにサイズを変えて行くことが足にとっては最良なのです。