B.履物の誕生 

 人は猿から進化しました。3万年前の『新人』の時代に『現代人』とほぼ同じ骨格になります。そして、その骨格は現在もほとんど変わっていません。そして、足の基本的な構造もこの頃からほとんど変化していません。

 人類は手を使って道具を造り、道具を使って狩猟をし、やがて一部の動物を家畜化し、穀類などの植物を育てることで食料の一部を貯蔵する技術を手に入れます。豊かな生活環境により彼らの人口は急速に増加します。すると、彼らの棲んでいる草原の生産性では彼らの人口を支えきれなくなります。このとき、新たな生活空間を求めて彼らの一部が草原を離れ、他の環境に移動し始めたことは容易く想像できます。

 最初はさほど極端な環境変化の無い場所へ移り住むことが出来たでしょう。
 しかし、その様な場所はすぐに埋め尽くされてしまいます。やがて人類はより苛酷な生活環境の地域にも移動をはしめます。このとき人間は『樹上生活』から『地上生活』へと長い時間をかけて身体を順応変化させるのではなく、様々な道具を発明し使用することにより、彼らにとって苛酷な生活環境を自分たちの本来の生活環境(人類誕生の地域)に近似させるように努めました。
暑さや寒さから身体を保護する『衣類』を発明し、先鋭な岩石や灼熱の砂から足を保護する『サンダル』『靴』『下駄』などが『原点の環境』と『現在の環境』のギャップを埋める道具として発明されました。それらは移住して言った先の環境に合わせ改良され現在も使用され続けられています。

 『サンダル』はその原型がエジプト文明の遺跡から発見されています。

 『下駄』は紀元前3000年頃の中国の遺跡から発見された田下駄(柔らかな水田に足をとられない様に履かれた下駄)が現在のところ最古のものとされています。日本でも稲作の伝来により紀元後200年頃の弥生時代後期の遺跡から同様の田下駄が出土しています。

 最古の『靴』は紀元前3000年ほど前に現在のイラク南部に栄えたシュメール文明の遺跡から発見された陶器製の靴(祭礼や神事などで神に奉げるため作られたものと推測されています。)にまで遡ることができます。その形状から、当時の人々が外部の環境から足を守るため、この頃すでに足全体を包み込む形の履物を履いていたであろうことが推測されます。